○留置権
〈意義〉
他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するとき、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することによって、債務者に対して債権の弁済を間接的に強制することができる。
〈性質〉
- 付従性、随伴性、不可分性(296条)が認められる。
- 優先弁済的効力を持たず、物上代位性も認められない。
〈成立要件〉
- 他人のものを占有していること。留置権の目的物は、債務者の所有物である必要はなく、債権者の占有する他人の物であればよい。(295条1項)
- 債権と物との牽連性があること。他人の物の占有者が「その物に関して生じた債権」を有することが必要である。(295条1項本文)債権が物自体から生じた場合、あるいは債権が物の返還請求権と同一の法律関係または同一の生活関係から生じた場合において、判例・通説ともに牽連性を認めている。
- 自己の債権につき弁済期が到来していること。(295条1項但書)
- 占有が不法行為によって始まった場合ではないこと。(295条2項)判例上、占有開始後に占有権原が消滅した場合には、占有権原がないことについて債権者が悪意だけでなく善意・有過失である場合にも、留置権は成立しないとされている。
*対抗要件は、留置権がその物を留置していることで事足りる。目的物が不動産であっても不要である。
〈効力〉
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留置的効力
- 被担保債権の弁済がなされるまで、目的物を留置できる(=引渡しの拒絶)
- 留置権者には留置物につき善管注意義務がある。
- 債務者の承諾なしに留置物の使用・賃貸・担保給与は不可(298条1項2項本文)。ただし、留置物の保存に必要な使用はなしうるが、得られた利益は不当利得となる。
- 留置権は物権であるので、留置物の強制競売や担保権実行としての競売における買受人に対しても、被担保債権の弁済があるまでは目的物の引渡しを拒むことができる。(事実上の優先弁済権)
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果実収取権
留置権者には果実収取権が認められるが、298条2項の関係上、法定果実についてはあまり意味を持たない。
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費用償還請求権
留置物について必要費あるいは有益費を支出したときは、所有者に対してその償還を求めることができる。(299条)
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競売権
留置権者にも競売権は認められている。ただし、これは債権者を物のままで留置する負担から解放し、お金の形で留置できるようにするための換価のための競売である。
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留置権の行使と消滅時効
留置権の行使をしても債権についての時効の完成猶予の効力はない。(300条)ただし、留置権者が裁判上留置権の抗弁を主張する際に、その基礎となる被担保債権の存在を主張した時には「催告(150条)」と同じ効力が生じる。
〈消滅〉
- 物権および担保物権一般の消滅原因が発生したとき
- 留置権者に保管義務等の違反があり、債務者が留置権消滅請求をしたとき(298条3項)
- 債務者が相当の担保を提供して留置権消滅請求をしたとき(301条)
- 留置権者が留置物の占有を喪失したとき(302条本文)。ただし、留置権者が債務者の承諾を得て賃貸または質入れをした時には、代理人による占有があるので別である(同条但書)。また、留置権者が奪われた目的物を取り戻せば、留置権は消滅しない(203条但書)
- 債務者が破産したとき
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