意義
例2) 企業Aに勤めるBが給料2ヶ月分30万円支払ってもらえていない時に、Aに600万円の貸金債権を有するCが、Aの財産210万円に対して強制執行の申立てをした。【通常の法的関係】
・債権者平等の原則に則ると、Bが配当の申し出をしても、Bは換価代金の21分の1しか弁済を受けることができない。
・しかし、社会政策的見地からすれば、給料債権については優先弁済権を与えることが妥当であると言える。
【先取特権の意義】
・法律の定める一定の債権を有する者は、他の債務者に優先して弁済を受けることができる。
性質
・付従性、随伴性、不可分性(305,296条)および物上代位性が認められる。種類
・一般先取特権(306条〜310条)1位:共益費用先取特権…公平の観念に基づく
利益を受けていない債権者には先取特権を主張しえない
2位:雇用関係先取特権…社会政策的見地に基づく
3位:葬式費用先取特権…社会政策的見地に基づく
4位:日用品供給先取特権…社会政策的見地に基づく
下記二つの先取特権は、特別先取特権と称される。
・動産先取特権(311条〜324条)
1位:不動産賃貸借先取特権
旅館宿泊先取特権
運輸先取特権
2位:動産保存先取特権
3位:動産売買先取特権
種苗・肥料供給先取特権
農業労務先取特権
工業労務先取特権
・不動産先取特権(325条〜328条)
1位:不動産保存先取特権
2位:不動産工事先取特権
3位:不動産売買先取特権
順位
・同一の目的物の上に複数の先取特権が成立することがある。民法は、その債権の保護の必要性の度合いを考慮して、優先順位を定めている。
ア)一般先取特権相互間
上記に掲げる順位による(306・329条1項)
イ)一般先取特権と特別先取特権との優劣
特別先取特権が優先されるが、共益費用先取特権は例外として、その利益を受けた総債権者に対して優先する(329条2項)
ウ)動産先取特権相互間
動産先取特権においては3グループに分け、グループ相互間で順位づけを行う(330条1項)
ただし、果実を目的とする動産先取特権相互間の順位については、同条2項を参照
エ)不動産先取特権相互間
上記に掲げる順位による(325・331条1項)
同一不動産につき、逐次の売買があった場合はその限りではない(331条2項)
オ)同順位の先取特権相互間
各債権額の割合に応じて弁済を受ける(332条)
【質権との競合】
・動産質権と先取特権が競合するとき、動産質権は330条1項に掲げた第一順位の動産先取特権と同順位として扱う。
・不動産質権と先取特権が競合するとき、抵当権の規定が準用される(361条)。不動産保存先取特権と不動産工事先取特権は、337条、338条により、登記があれば抵当権に優先する(339条)。
・不動産売買先取特権については規定がないため、登記の前後によって優劣が定まる。
・不動産につき一般先取特権と抵当権が競合するときは、抵当権が未登記であれば一般先取特権は登記に関わらず優先する。抵当権に登記があり一般先取特権が未登記であれば、抵当権が優先される。両者に登記があれば、登記の前後によって優劣が決まる。
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