課税要件

課税要件法定主義
→税金がかかる条件(課税要件)や手続は国会で決めるべき
 →第一義的には法律のみが課税の根拠(法令解釈通達、慣習法)
  →正当な法解釈に基づく通達に沿った課税は有効だが、境目は曖昧
→命令(政令や省令)は法律からの適切な委任がある場合に法源となる

課税要件明確主義
→納税者が読んでわかる明確なものであるべき
 →不確定概念の排除
  ⇔「不相当に高額」「法人税の負担を不当に減少」←不明確では?

適正手続保障
→課税手続きや救済手続きは適正であるべき
 →立法上の要請として作用
  →平成23年12月改正による質問検査権の明文化

合法性の原則
→課税庁が勝手に租税の増額や減免をしてはならない
 →税務訴訟における和解の禁止
 →税務訴訟における信義則の限定的な運用

*租税法律主義の機能
法的安定性→法律に定める以上の税負担は負わない
納税者の予測可能性の確保→税負担は事前に法律を参照すればわかる
※税金が納税者の経済活動を阻害しない
農政者に不利な遡及立法の禁止
⇒判例では評価が分かれる
 ・「予測可能性」「遡及立法」に触れずに判示
  →遡及立法は本当に租税法律主義違反?
   →現在では納税者不利な遡及適用はあまり見られず

租税回避

節税:税法が通常予定している行為で税負担を減らすこと
 ↕ 中間領域があるのでは?
 ↕ →通常予定されてない異常な行為だが、適法に税負担を減らすこと(租税回避)
脱税:違法な行為によって税負担を減らすこと(定義も曖昧)

*租税回避の類型
課税要件既定の回避(私法の濫用)
 →課税対象に指定されることを取引の操作によって回避する
課税減免規定の充足(税法の濫用)
 →税負担を軽減できる規定の適用要件を取引の操作によって意図的に作り出す

*租税回避の否認
租税回避による税負担の軽減をどう防ぐ?
→否認
 →①については本来の正常な法形式に税法上引き直すこと
  ②については税負担の減少を認めないこと
 →否認規定の立法による否認と、課税要件規定または課税減免規定の解釈による否認
  →立法による対処のほうが基本的に望ましい(⇒武富士事件)
   →「租税回避」の意義も含め「否認規定なしの否認」の境界がかなり曖昧
  →避妊規定は回避されるわけにはいかない
   →不確定概念の多様、租税法律主義と租税回避否認

*租税回避否認規定の類型
包括的否認規定(GAAR)
 →「租税回避ならば否認できる」規定だが、日本には存在しない
個別分野に関する一般的否認規定(SAAR)
 →「この分野について租税回避したら否認できる」規定
個別的否認規定(TAAR)
 →「こういう取引によって租税回避したら否認できる」規定
  →TAARと課税要件既定の境目は曖昧

*文理解釈の原則
法解釈は様々な方法がある
→最高裁判決文にて、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではない」
 ⇒ホステス源泉徴収事件

税法には、民法などの私法で使われる概念が用いられる(借用概念)
→借用概念は、他の法領域で使われる意味と同様に解すべき
 →統一説⇔独立説、目的適合説←法的安定性、予測可能性(租税法律主義の目的)
  →税法と他の法領域では法の目的が異なるのでは?
  →統一説をとると、租税回避が横行するのでは?

参考:武富士事件
当時、国外の財産を国外に住んでいる者に贈与すれば、贈与税を免れることができた
 ↓
自身が経営する会社の株式を無税で贈与するため、香港に子供を移住させ、外国法人を経由して株式を贈与。1000億円超の贈与税を回避
 ↓
贈与税を課すべきか?

第一審:納税者は勝訴
控訴審:納税者は敗訴
    ①の租税回避行為について、立法なしで否認すべきではないとしている
    →租税法律主義に基づく租税回避に対する考え方や借用概念論の観点からも説得的(補足意見)
     →この考え方だけで解決する?
     →②の租税回避(税法の濫用)は、課税減免規定を限定的に解釈することで対処可能?

担税力

税制改革法3条→公平・中立・簡素

公平
→法の下の平等(憲法14条)の税制におけるあらわれ
 →別名:租税公平主義
→性別以外の理由なく、女性が男性よりも重い税負担を負うことは公平ではないので違憲
 →どう判断する?
→水平的公平
 →同じ状況にある納税者は同じように税制上取り扱われるべき
→垂直的公平
 →違う状況にある納税者は違うように税制上取り扱われるべき
  (法の下の平等の解釈としての形式的平等と実質的平等)

*担税力
「同じ」か「違う」か、どう測定する?
応益説:受けた行政サービスの多寡
応能説:租税を負担する能力の多寡
 →国の行政サービスの総量は把握しにくいため、国税は応能説が妥当
  →租税を負担する能力(担税力)に応じた課税
    (応能負担原則⇔地方税:応益負担原則)
   →担税力の指標は、所得・資産・消費など

*公平性に対する批判と中立性
・何が違って何が同じか、という判断(担税力の選択)は恣意的では?
・憲法14条1項に定められた要素以外の差別は禁止?
・公平性よりも中立性を重視すべきでは?
 →中立的な税制は納税者の選択を歪ませない
 →最も社会において効率的、経済成長につながる

*具体的問題
所得税と消費税、どちらが望ましい?
→単年の所得を担税力の指標とするなら、所得税が最も公平、消費税は逆進的
→ただし、単年の消費や生涯所得を指標とすると、消費税は必ずとも逆進的とは言えない
→どんなモノやサービスを買っても負担が生じる消費税は、所得税よりも中立的

参考:大嶋訴訟
事業所得者は実際に支出した必要経費額を収入金額から控除できる
その一方、給与所得者は法廷の金額のみ控除できる
→不公平であり、憲法14条違反では?

大学教授が、実際に勤務上支出した金額が法廷の金額よりも多い、として出訴
 ↓
第一審:納税者が敗訴
控訴審:納税者が敗訴
→いわゆる二重の基準論におけるもっとも緩やかな合理性の基準を採用
→租税法規について違憲無効とされて確定した判決は存在しない
→給与所得者の実額控除が昭和62年度税制改正で創設(特定支出控除)
 →訴訟を通じて、給与所得控除額は増額
  →給与所得者の担税力の弱さを示した、といえる


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