はじめに、本ページは筆者の試験対策を目的に制作したノートが元になっている。公開する際に最低限の変更を加えたが、労働法の全てに触れているわけではなく、また私の理解が浅い個所も存在する。しかし、労働法を学ぶ上では前提となる知識でもあるため、本ページが何かしらの助けになれば幸いである。

労働法総論

労働法とは?
→労働契約法、労働基準法、労働組合法などの個々の法律の総称

「雇用されて働く」?
→法的には、雇用契約を締結して働くこと
→会社に「雇われて」働くこと=「雇用」
 →民法:雇用契約(民法632条)
 →労働契約法や労働基準法:労働契約(労働契約法6条)
  →使用者の具体的な指示(指揮命令)に従い労働に従事し、報酬としての賃金を受け取る

雇用≠請負
   →請負契約の目的は「仕事の完成」(裁量判断)
    ex)大工さんに家のリフォームを依頼し、代金を支払う契約
  ≠委任
   →(準)委任契約の目的は「サービスの提供」(裁量判断)
    ex)医者にけがの治療をしてもらい、報酬を支払う契約

*雇用契約の特殊性
・労働力の貯蔵不能性
・集団vs個人、経済的格差、人的従属性
 →交渉力の不均衡を是正するのが労働法

*労働法制体系
・雇用関係法(個別的労働関係法)
 →労働基準法
  →労働条件の最低基準や基本的人権に関する規律を行う
 →労働契約法
  →労働契約に関する基本的ルールを規定
・労使関係法(集団的労働関係法)
 →労働組合法
  →労働組合が使用者と交渉する仕組みを設定し、労働条件の向上や集団的な設定を促す
・労働市場法
・労働紛争処理法

○労使間の労働契約に注目して対処
→労働条件の最低基準/契約内容を規律(⇒契約自由の原則を修正)
 →最低基準:労働基準法/最低賃金法/労働安全衛生法等
 →解釈基準:労働契約法等
→無過失で労災を補償/救済(⇒過失責任主義を修正)
 →労災の補償や救済:労働基準法、労災保険法

○労使間の交渉力の不均衡に注目して対処
→労働組合を認めて集団間取引を行わせる(⇒取引の自由を修正)


労働契約

法律(強行法規):労働基準法など
 ↓
労働協約:労働組合法16条(規範的効力)
 ↓
就業規則:労働契約法12条(最低基準効)
 ↓
労働契約:明示・黙示の合意、信義則による補充や修正など


法律(強行法規)
→労働関係では労基法や最低賃金法など
 ⇒労働基準法13条
  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
  この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
 ⇔強行法規が最低基準を定める趣旨なら、それを上回る内容は当然可能

労働協約
→労働組合と使用者の間で締結される労働条件に関する書面上での合意
 ・規範的効力:強行的かつ直律的効力
        一般的拘束力(非組合員への拡張適用)
 ・債務的効力:使用者と労働組合間の契約としての効力
→労働契約の内容である労働条件は、労働契約の両当事者の合意による決定されるのが原則

就業規則
→職場の規律や労働条件について作成する規則類(統一的かつ集団的な労働条件を適用)
 →常時10人以上(事業場単位)の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成及び届出義務あり
 →意見聴取義務
 →書面での制作
 →周知義務
⇔法令や労働協約に違反することはできない
⇔就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める契約は、その部分については無効

労使慣行
→成文規範に基づかない集団的な取り扱いが長期間反復・継続して行われている
 →使用者と労働者の双方に対して事実上の行為準則として機能する
労働法に関する備忘録

労働者とは?

雇用契約を締結して働いている人。

≠ 請負契約で働いている人ではない。

判例・学説の立場:契約の名称よりも、契約の実態からみて判断する。

労基法上の「労働者」は労基法をはじめとした法律による保護を受けることができる。

労基法上の「労働者」でなければ、労基法の保護はない。

労働法規の適用範囲と使用者概念

労働基準法上の「労働者」

⇒労働基準法9条: この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

参考:横浜南労基署長事件

事例内容の要点:

  1. A 社のXに対する指示は、運送物品、運送先及び納入時刻に限られ、運転経路、出発時刻、運転方法等には及ばず、運送業務終了・次回運送業務指示の間に、運送以外の別の仕事が指示されることはなかった。
  2. 始業時刻及び終業時刻が定められていたA 社の一般従業員と異なり、当日の運送業務終了後、翌日の最初の運送業務の指示を受け、その荷積み終了後に帰宅可能であり、翌日は最初の運送先に直行して運送業務を行った。
  3. 報酬は、積載可能量・運送距離により定まる運賃表による出来高払いであった。
  4. Xの所有するトラックの購入代金、ガソリン代、修理費、運送の際の高速道路料金等はX 負担であった。
  5. Xに対する報酬の支払に当たっては、所得税・社会保険料等控除はされず、事業所得として確定申告がなされていた。

判旨:Xは労働基準法上の労働者ということはできない。

労働組合法上の労働者

⇒労働組合法3条: 「職業の種類を問わず」「賃金、給料その他これに準ずる収入」によって生活する者。

「労働組合法上の労働者」の判断要素

適用除外

若干の適用除外

使用者とは?

労働法上の責任追及の相手。

労働契約法上の「使用者」

⇒労契法2条2項: 労契法上の労働者を雇用している者であり、当該労働者を使用し賃金を支払う者。

⇔労働関係に複数の企業が関与する場合、誰が使用者としての義務を負う?

法人格否認の法理

①法人格「形骸」型: 親子会社において、子会社に実体がなく法人格が形骸的なものに過ぎない場合

②法人格「濫用」型: 親子会社において、親会社が子会社の法人格を悪用している場合

→ 子会社の法人格を否認し、親会社に直接契約責任を追及する法理

法人格否認の効果

争点:①真実解散か、②偽装解散かで、その効果を異なるものとするか。

【裁判例】

最高裁:事業を承継している会社とそのものが法人格を支配し濫用しているという事情がない限り,法人格を濫用した主体(親会社等)に対して契約責任を追及すべき。

黙示の労働契約成立

要件

→ 労働契約の相手方たる使用者として責任を追及することが可能

労働基準法上の「使用者」のタイプ

労働組合法上の「使用者」

→労働組合法上の責任を負う主体としての使用者



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